大阪地方裁判所 昭和57年(行ウ)19号 判決
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【説明】
「一 原告の請求の趣旨
1 被告豊能税務署長(以下「税務署長」という。)が原告に対し昭和五五年六月二五日付でなした、原告の昭和五三年分所得税の更正処分(但し、異議決定によつて一部取消された後のもの。以下「本件更正処分」という。)のうち、分離長期譲渡所得金額一一八〇万四〇〇〇円、税額二三〇万二八〇〇円を超える部分、及び、これに伴う過少申告加算税の賦課決定処分(但し、異議決定により変更された後のもの。以下これを「本件賦課決定処分」といい、これと本件更正処分とを併せて「本件各処分」という。)を取消す。
2 被告国税不服審判所長(以下「審判所長」という。)が原告に対し昭和五六年一一月二〇日付でした、本件各処分に対する原告の審査請求を棄却する旨の裁決(以下「本件裁決」という。)を取消す。
3 訴訟費用は被告らの負担とする。
二 請求の趣旨に対する被告らの答弁
主文同旨」
【判旨】
一原告が、昭和五四年三月四日、被告税務署長に対し、昭和五三年中に原告所有の資産を譲渡したことにより譲渡所得を得たので、右所得金額から必要経費と措置法三五条一項による特別控除をしたうえ、分離長期譲渡所得として、その金額を一一八〇万四〇〇〇円、納付すべき税額を二三〇万二八〇〇円とする確定申告をしたこと、これに対し、被告税務署長が、昭和五五年六月二五日付で別表1の更正処分等欄に記載のとおりの更正処分並びに過少申告加算税及び重過算税賦課処分をしたこと、そこで原告が、被告税務署長に対し、同年八月二四日、右各処分につき異議申立をしたところ、被告税務署長が、同年一一月二〇日付で別表1の異議決定欄に記載のとおりの決定をしたこと、さらに原告が、右処分を不服として、同年一二月一九日、被告審判所長に対し、審査請求をしたところ、被告審判所長が、昭和五六年一一月二〇日付で右審査請求を棄却する旨の本件裁決をし、同年一二月一九日、原告に本件裁決書の謄本を送達したこと、はいずれも当事者間に争いがない。
二そこでまず、被告税務署長のした本件各処分が適法であるか否かについて判断する。
1 原告がした昭和五三年分の所得税確定申告の内容が別表2の確定申告欄に記載のとおりであることは当事者間に争いがないところ、被告税務署長は、原告が昭和五三年三月一日、訴外井本勝也に対し、本件土地を代金七〇五〇万円で売却したと主張するので、まず、この点について判断する。
(一) 原告が昭和五三年三月七日付で二〇〇〇万円の領収証、一〇〇〇万円の出資金預り証、及び、一〇〇〇万円の連帯保証書を作成して訴外井本勝也に交付したことは当事者間に争いがなく、右争いのない事実に、<証拠>によると次の事実が認められる。すなわち、
(1) 原告は、訴外荒源商事株式会社の常務取締役である訴外井本勝也に対し、昭和五三年三月一日、その所有にかかる本件土地を、代金六〇五〇万円で売却し、なお、その際、本件土地上の本件建物は原告において撤去する旨約した。
(2) そして、右井本は、原告に対し、右契約締結の日に一〇〇万円を支払つた(乙第一六号証参照)外、残金五九五〇万円を、次の通り支払つた。
(イ) 右井本は、昭和五三年三月二日、株式会社大和銀行桜川支店(以下「大和銀行」という。)を訪れ、当時大和銀行の貸付課長をしていた訴外平塚浩を介して同銀行に対し、千里中央の土地一四〇坪(462.80平方メートル)を購入するについて、その一部手附金の支払のために、五〇〇万円の融資を申込み、(乙第二六号証)、同日、右銀行から五〇〇万円の融資を受け、そのうち四五〇万円を前記土地の売買代金手附金として支払つた(乙第一七号証参照)。
(ロ) 次に、訴外井本は、当時その担当者であつた訴外大和銀行の山田隆を介して同銀行に融資の申込をし、同月四日、本件土地の売買代金の内金三〇〇〇万円を支払う資金として、右銀行から三一〇〇万円の融資を受け、同月七日、そのうち三〇〇〇万円を、原告に支払い、一方、原告から、金額二〇〇〇万円の領収証(乙第一八号証)を受取つた外、さらに、金額各一〇〇〇万円の同日付の出資金預り証(乙第一三号証)及び連帯借用証書(乙第三二号証)を受取つた。
(ハ) さらに、右井本は、同年六月一日、本件土地代金の残金の支払に充てるため、大和銀行の前記山田隆を介して同銀行に対し、一四〇〇万円の融資を申込んで(乙第三四号証)、その融資を受け、これと他から調達した資金一七〇〇万円とを、一旦自己の普通預金口座に入金した後、同月三日、右預金から二五〇〇万円を引出した上、原告に対し、本件土地の残代金として右二五〇〇万円を支払つた(乙第一九号証参照)。
(3) なお、当時、右井本は、前記大和銀行の担当者である前記山田隆らに対し、土地を買つて建物を建てる旨述べており、メゾン千里のようなマンションを購入する旨の話は全くしていない。
(4) 次に、原告は、訴外井本に対し、昭和五三年六月一四日に、同月六日付売買を原因として、本件土地の所有権移転登記手続をし、ついで、同年一〇月頃、本件土地を引渡した。
そして、本件建物は、その後原告が取壊さなかつたので、訴外井本がこれを取壊した。
以上の事実が認められ<る。>
(二) もつとも、被告税務署長は、原告は訴外井本に対し、本件土地を代金七〇五〇万円で売却し、昭和五三年三月一日に一〇〇万円を、同月三日に四五〇万円を、同月七日に三〇〇〇万円を支払つた外、同年六月三日に三五〇〇万円を支払つたと主張しているところ、<証拠>によれば、訴外井本は、大和銀行に対し、昭和五三年三月二日に、本件土地代金は七〇〇〇万円であるとして、まず五〇〇万円の融資の申込をし、また、同年六月一日に本件土地残代金は三五〇〇万円であるとしてそのうち一四〇〇万円の融資の申込をして、それぞれ右融資を受けたことが認められる。
しかしながら、他方、<証拠>によれば、同号証の昭和五三年六月三日の欄には、「土地代金支払二五m」(二五mは二五〇〇万円の意味)と記載されており、また、<証拠>によれば、訴外井本は、昭和五三年六月三日に、大和銀行の普通預金口座から二五〇〇万円の払出を受けているのみであつて、その前後にさらに一〇〇〇万円の払戻を受けたことはないことが認められる。そして、前掲乙第一九号証によれば、同号証の領収証には、原告が訴外井本から昭和五三年六月三日に本件土地代金として二五〇〇万円を受けとつた旨記載されていることが認められるところ、右以外に、訴外井本がさらに一〇〇〇万円の資金を他から調達してこれを原告に支払つたことを認め得る証拠は何らない。
そうとすれば、訴外井本が大和銀行に対し、前記の如く、本件土地代金は七〇〇〇万円であるとして融資の申込をし、また、その後本件土地代金の残金は三五〇〇万円であるとして、一四〇〇万円の融資の申込をした事実があるからといつて、このことのみから、本件土地の売買代金は七〇五〇万円であつて、訴外井本は、昭和五三年六月三日に、原告に対し、三五〇〇万円を支払つたものとは到底認め難く、むしろ前記(一)に認定の通り、本件土地の代金は六〇五〇万円であつて、訴外井本は、原告に対し、右六月三日には残金二五〇〇万円を支払つたものと認めるのが相当である。よつて、右の点に関する被告税務署長の主張は採用できない。
(三) 次に、原告は、その本人尋問において、原告は、訴外井本に対し、昭和五三年二月二八日、メゾン千里を代金三〇五〇万円で売却し、ついで右売買契約を解約して、同年六月一日、本件土地を代金五〇五〇万円で売却したとの趣旨の供述をしているところ、<証拠>によると、原告が訴外井本勝也に対して、昭和五三年二月二八日、メゾン千里を代金三〇五〇万円で売却したとする売買契約書(乙第一二号証)及び、原告が井本に対し、同年六月一日、本件土地を代金五〇五〇万円で売却し、特約条項として「但し本契約による所有権移転登記は別紙マンション売買契約書解除にともなう譲渡担保であつて本年一〇月一五日迄に債務の履行なき時は建物収去及土地明渡しを施すものとし、尚債務者が債務弁済を成したる時は買主は本所有権を解除する。」との記載のある売買契約書(乙第三三号証)が作成されていることが認められ、また、<証拠>によれば、乙第一六、一七号証の領収証には、「メゾソ千里D三―一〇〇三、一〇〇四の売買に関する手付金」の一部ないし残金全部と記載されており、また、乙第一八号証の領収証には、「メゾン千里D三―一〇〇三、一〇〇四、売買中間金」と記載されていることが認められる。
しかし、
(1) <証拠>によれば、前述の通り、訴外井本は、昭和五三年三月二日に、千里中央の土地一四〇坪(462.80平方メートル)を購入するについて一部その手付金に使用するためとして大和銀行から五〇〇万円の融資を受け、また、同年三月六日同銀行から右土地代金支払いのための資金として三一〇〇万円を借受け、さらに昭和五三年六月一日に右銀行から、本件土地代金の残金支払いのために必要であるとして、一四〇〇万円を借受けている(乙第三四、第三五号証参照)のであつて、訴外井本は、大和銀行から、前記金員をいずれも、土地代金の購入資金として借受け、メゾン千里の購入資金としては借受けていないことが認められる。
(2) <証拠>によれば、訴外井本は、原告に対し、昭和五三年二月二八日に、メゾン千里の売買代金三〇五〇万円の手附金として五五〇万円を支払つたとされているが、訴外井本が、前記の如く同年三月二日に土地購入資金として大和銀行から五〇〇万円を借受けた以外に、メゾン千里購入の手付金として支払つたとされる右五五〇万円を、右借受け以前の同年二月二八日又はその直前に、大和銀行その他から借受けるなどしてこれを調達したとの事実を認め得る証拠は全くない。
(3) <証拠>によれば、原告が大阪地方裁判所昭和五一年(ケ)第一九号事件について同裁判所に提出した昭和五一年一一月一日付上申書において、原告がメゾン千里を取得した価額は約三六〇〇万円であり、昭和五一年一一月当時のメゾン千里の実勢価格は五四〇〇万円であるとしていることが認められるところ、原告自身が右の如く五四〇〇万円と評価しているメゾン千里を、それから約一年三ケ月後の昭和五三年二月に、右価格よりもはるかに安い三〇五〇万円で売却するというようなことは、特段の事情のない限り、認め難いことというべきである。
そして、以上(1)ないし(3)の諸事情に照らして考えれば、前記乙第一二号証のメゾン千里の売買契約書や、乙第一六ないし第一八号証に、メゾン千里の手附金の一部ないし残金全部と記載されている部分は、いずれも内容虚偽のものであつて、むしろ右乙第一六ないし第一八号証の領収証は、本件土地の売買代金の領収証と認めるのが相当である。
さらに、(1)<証拠>によれば、原告は、訴外井本に対し、昭和五三年三月一日に一〇〇万円を支払つていることが認められること、(2)<証拠>によれば、訴外井本は、原告に対し、昭和三五年三月二日に四五〇万円を、同月七日に二〇〇〇万円を支払つた旨の領収書があること、また、原告は、訴外井本から、昭和五三年三月七日に、新商品開発協力資金として一〇〇〇万円を預つた旨の右同日付書面(乙第三一号証)が作成されており、さらに、原告は、訴外井本から、昭和五三年三月七日に、一〇〇〇万円を借受けた旨の右同日付連帯借用証書(乙第三二号証)が作成されていることが認められるところ、当時、原告が、前記売買代金の領収書にある合計二五五〇万円の外に、真実、前記各書面にあるように、新商品開発のための資金その他に一〇〇〇万円もの金員を要したことを認め得る証拠はないこと、(3)<証拠>によれば、乙第二八号証の取引先カードの昭和五三年三月七日の欄に、訴外井本が土地代金として三〇〇〇万円(三〇m)を支払つた旨の記載のあることが認められること、(4)<証拠>によれば、同号証には、原告は、訴外井本から、昭和五三年六月三日に、本件土地代金として二五〇〇万円を受けとつた旨の記載のあることが認められること、(5)前記の如く、本件土地については、昭和五三年六月一四日に、同月六日付売買を原因として、訴外井本に対しその所有権移転登記がなされているところ、本件土地について、真実昭和五三年六月一日に売買がなされて乙第三三号証の売買契約書が作成されたのであるならば、その一四日後の同月一四日に所有権移転登記をするに際し、その登記原因を、同月一日付売買とすれば足りる筈であつて、わざわざ右売買の日を遅らせて同月六日付売買とする合理的理由は認められないこと、等の諸事実に照らして考えると、前記(一)に認定の通り、原告は、訴外井本に対し、本件土地を昭和五三年三月一日に代金六〇五〇万円で売却したのであつて、前掲乙第三三号証中、右に反する部分(売買の日、売買代金等)は、その内容が虚偽であると認めるのが相当である。
<証拠判断略>
(四) よつて、原告は、訴外井本に対し、昭和五三年三月一日、本件土地を代金六〇五〇万円で売却したものというべきである。
2 次に、<証拠>によると、原告は、昭和四一年一二月一六日、本件土地を、大阪府から、原告の母訴外神田キヌエ名義をもつて、代金四二八万五九四一円で買受け、翌昭和四二年右代金を支払い、同年六月一四日、右神田キヌエ名義で本件土地の所有権保存登記を経由し、その後、同五三年三月八日、真正なる登記名義の回復を原因として原告名義の所有権移転登記を経由したことが認められ<る。>
したがつて、原告の本件土地の取得費は、四二八万五九四一円である。
3 次に、<証拠>によると、原告は、昭和四八年一〇月三一日、訴外チヤタニミサワホーム株式会社に対し、前記神田キヌエ名義で、本件建物の建築を、請負代金二〇〇万円で請負わせて、同四九年二月頃本件建物を建築し、同四九年七月八日、右神田キヌエ名義で所有権保存登記を経由した後、同五三年三月八日、真正な登記名義の回復を原因として、原告名義にその所有権移転登記を経由したことが認められ<る。>
ところで、本件建物は、前記二1(一)で認定のとおり、原告と訴外井本勝也との間の本件土地の売買契約においては、原告においてこれを取壊す約定になつていたが、その後原告がこれを取壊さなかつたため、右井本において取壊したものであるところ、右事実からすれば、本件建物の取壊しは、本件土地を譲渡するために行われたものというべきである。そして、本件建物の建築完成時である昭和四九年二月から、本件土地を原告が訴外井本に引渡した同五三年一〇月までの期間の本件建物の減価額の合計が二五万二〇〇〇円であることは、被告税務署長の認めるところであるから、他に特段の立証のない本件においては、本件建物の減価額の合計は右同額と認むべきである。したがつて、本件土地の譲渡による損失(譲渡費用)は、本件建物の建築代金二〇〇万円から、本件建物の減価額合計二五万二〇〇〇円をさし引いた一七四万八〇〇〇円であると認めるべきである。
4 次に、被告税務署長は、本件土地の譲渡については措置法三五条一項の適用がなく、同法三一条一項、二項による特別控除額一〇〇万円が認められるにすぎないと主張するのでこの点について判断する。
(一) 措置法三五条一項は、「個人が、その居住の用に供している家屋で政令で定めるものの譲渡をし、当該家屋とともにその敷地の用に供されている土地若しくは当該土地の上に存する権利の譲渡」をした場合と規定し、右政令の定めとして、同法施行令二三条一項は、「個人がその居住の用に供している家屋(当該家屋のうちにその居住の用以外の用に供している部分があるときは、その居住の用に供している部分に限る。……)とし、その者がその居住の用に供している家屋を二以上有する場合には、これらの家屋のうち、その者が主としてその居住の用に供していると認められる一の家屋に限るものとする。」と規定しているところ、右措置法の規定は、居住用財産を譲渡した場合には、通常居住用の代替資産の取得が必要であるため、措置法三一条の規定する長期譲渡所得の特別控除(一〇〇万円)の特例として、高額の特別控除を認めて課税の軽減を計つているものである。したがつて、措置法三五条一項にいう「その居住の用に供している家屋」とは、その者が生活の拠点として利用している家屋であつて、一時的な利用を目的とするものでないものをいい、これに該当するか否かの判断は、その者の日常生活の状況、その家屋への入居目的、その家屋の構造及び設備の状況その他の事情を総合勘案して行うべきものである。また、右措置法の趣旨からすれば、その居住用に供している家屋であれば、これを取壊すことがその敷地の売買契約の条件となつていること、当該家屋の敷地を譲渡するためには物理的にこれを取壊すことが必要であるなど、当該家屋の取壊しがその敷地の譲渡と密接な関係にあれば、当該家屋の敷地を譲渡した場合にも措置法三五条一項の適用があるといえる。
(二) これを本件についてみるに、<証拠>によると、原告は、昭和五三年二月二八日、本件建物に転居したとして、同年三月三日、豊中市長に対し、住民基本台帳法二二条に定める転入届をしていることが認められる。
ところが、前記二1(一)で認定したとおり、原告は、右転入の日の翌日である昭和五三年三月一日に、本件建物を取壊す約定で本件土地を他に売却しており、さらに、<証拠>によると、(イ)原告は、昭和五三年五月一五日付で大阪府知事に対し、宅地建物取引業者の免許を申請するにあたり、その事務所所在地を本件建物内としていること、(ロ)本件建物附近には公衆浴場(銭湯)がないところ、本件建物内に浴室設備は存在しなかつたから、本件建物に居住して生活することは困難であつたこと、(ハ)住民基本台帳には、原告は、昭和五三年二月二八日に本件建物に転居したことになつているのに、本件建物の水道栓が開栓されたのは、同年三月八日であり、しかも、同月一四日までは全く水道が使用されていなかつたし、電気は同月七日から、電話は同年四月二一日から、ガスは同年三月二九日から、それぞれその使用が開始されたから、右水道、ガスの使用が開始された頃までは、本件建物に居住して生活することは、現実にはあり得ないこと、(ニ)原告は、同年八月一六日付で裁判所に提出した民事事件記録等閲覧、謄写票に、原告の住所を、本件土地上の本件建物ではなく、「豊中市新千里東町二丁目四番D三―一〇〇四」と記載しており、また、原告は、当時、現実に本件建物の外に、右D三―一〇〇四に住所を有していたこと、以上の各事実が認められ<る。>
そして、以上認定の諸事実からすると、原告がした前記転入届は、もつぱら措置法三五条一項の適用を受ける目的のみでなされたものであつて、原告において本件家屋をその生活の拠点として利用していたとは到底認め難いものというべきである。
(三) したがつて、原告がした本件土地の譲渡には、措置法三五条一項の適用はなく、同法三一条一、二項による特別控除一〇〇万円が認められるにすぎないというべきである。
5 右のとおりであつて、結局本件土地の譲渡価格は六〇五〇万円であり、その取得価額は四二八万五九四一円、譲渡費用は一七四万八〇〇〇円(必要経費計六〇三万三九四一円)、特別控除額は一〇〇万円であるから、原告の昭和五三年の分離長期譲渡所得は五三四六万六〇五九円である。したがつて、本件更正処分のうち、分離長期譲渡所得四〇八〇万四〇〇〇円の範囲の部分(原告が取消を求めている部分)は適法である。
6 また、原告において、本件更正処分を受けたことについて国税通則法(昭和三七年法律第六六号)六五条二項に規定する「正当な理由」を認めるに足る事実は、本件の全証拠によるもこれを認めることはできないから、被告税務署長が本件更正処分に伴つてした本件賦課処分のうち、原告が取消を求める部分も適法である。
三次に、被告審判所長のした本件裁決が違法であるか否かについて判断する。
1 原告は、被告税務署長が原告の審査請求に対して提出した答弁書には、本件異議決定の理由と同一内容の記載があるのみで、本件審査請求の理由に対応した主張がないところ、その後原告が第一ないし第一二反論書を提出し、本件審査請求をした当初とは事情が異つており、改めて原告が被告審判所長に対し、被告税務署長に適切な答弁書の提出を求めるよう申し出ているのに、被告審判所長は右申し出を無視し、何ら適切な処置をとることをせず、結局被告税務署長からは何ら答弁書は提出されなかつたので、本件裁決は違法であると主張する。
しかしながら、被告税務署長が本件審査請求の当初に答弁書を提出したこと、原告が主張の反論書を提出したこと、は当事者間に争いがないところ、<証拠>によると、右答弁書には、原告の審査請求の趣旨及び理由に対応する被告税務署長の主張が記載されていることが認められ、また、原告から提出された反論書には新たな主張のあつたことを認め得る証拠はないから、被告審判所長において再度被告税務署長に答弁書ないし反論書の提出を求める必要はないというべきである。したがつて、被告審判所長において、被告税務署長に対し、原告主張の書類の提出を求めなかつたとしても、国税通則法九三条に違反する違法なものではない。したがつて原告の右主張は失当である。
2 次に原告は、被告審判所長は、右のように原告が反論書を提出し、被告審判所長に対し、疑問があれば原告自身を尋問してもらいたい旨申し出ていたにもかかわらず、原告の口頭による意見陳述の機会すら奪つたから、本件裁決は違法であると主張する。
しかしながら、成立に争いのない丙第一号証によると、被告審判所長は、昭和五六年四月一〇日、原告から口頭による意見陳述を受けて口頭陳述録取書を作成していることが認められ、他にこれを覆すに足る証拠はないし、また、右以外に、さらに原告が被告審判所長に対し、口頭による意見陳述を申し出たことを認め得る証拠はない。したがつて原告の右主張は失当である。
3 さらに、原告は、被告審判所長は、原告の右反論書における主張を充分取り上げず、また、原告及び被告税務署長のいずれもが主張しない事実を認定しており、本件裁決は違法であると主張する。しかし、前掲乙第四号証によれば本件裁決には原告が主張するような違法事由はなく、適法に行われたことが認められ、これを覆すに足りる証拠は存しない。よって原告の右主張も失当である。
4 以上のとおり、被告審判所長がした本件裁決には、原告主張のような違法事由はなく適法なものであつたと認められる。
四よつて、原告の本訴請求はいずれも理由がないからこれを棄却することと<する。> (後藤勇)